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文章術(10)

『プロを目指す文章術』

ちょっと辛口の上級者向け指南書はいかが?

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エンターテインメントとは、

架空の「私小説」を書く

作業なのだ

(三田誠広)

『プロを目指す文章術』(三田誠広著、PHP研究所)

 第10回目は、三田誠広(みた まさひろ)氏によります『プロを目指す文章術』のご紹介です。

 三田氏は、1977年に『僕って何』で芥川賞を受賞された作家で、現在(2008年12月)、日本文藝家協会の副理事長や日本文藝著作権センターの理事長をされています。

 本書は、PHP研究所の『文蔵』という月刊小説誌に連載されていた内容をまとめたものです。したがって、ある程度、小説について詳しい方々を対象に書かれたエッセイなので、どちらかというと、初心者向けというより上級者向けの内容だといえるでしょう。

 但し、ここで言う上級者向けというのは、初心者が読んでも難しくてわからないという意味ではなく、作家にとって結構厳しい指摘がなされているという意味においてです。

 章立ては次の通りです。

第一章 「はじめの一歩」で必要なこと
第二章 文章から「小説」への旅立ち
第三章 「名作・名文」のワザに学ぶ
第四章 「エンターテインメント」は技術の宝庫
第五章 狙い目ありの「流行ジャンル」
第六章 「プロ作家」への道

 プロにとっての文章術について、次のように述べられています。

 時代のとらえ方、主人公のキャラクターの描き方、そして何よりも、どうやって主人公と書き手との間に距離をとるか。そういったもののすべてが、小説を支える文章術であり、その技術がなければ、プロの作家になることはできない。(16ページ)

 本書では、こうしたプロの文章術について解説されています。また、本書の特徴として、文学を大きく下記の三つに分類し、それぞれの特徴やアプローチの方法が詳しく述べられています。

@純文学
 芥川賞が貰えるような、芸術性が高くて、奥の深い作品
A大衆文学(中間小説)
 面白くて、なおかつ文学の気品を失わない作品
Bその他(ジャンル小説)
 推理小説や歴史小説など、特定のジャンルに特化した作品

 例えば、私小説というものがありますが、純文学では、あえて主人公と自分との間に距離をとることが重要となり、逆に、フィクションでは、自分が架空の主人公になりきって私小説のように書く必要があると、述べられています。

 さらに、名文・名作に学ぶ章では、川端康成や山田詠美、山本周五郎、村上春樹の翻訳を例に、その魅力やプロの文章術について解説されていますが、改めて、文学の深さというものがじわじわと迫ってきます。

 また、流行のジャンルの一つとして世話物的な時代小説がありますが、この作品の特徴は、例えば江戸時代という舞台を借りた、現代小説であると喝破されています。

 現代に生きるサラリーマンの悲劇や苦しみを、江戸時代を舞台に描くことによって、読者に生々しい苦しさを味わわせることなく共感してもらい、最後には人間の素晴らしさを伝えることができるというわけです。

 他に、芥川賞や直木賞の特徴など、わかりやすく述べられていますので、参考になります。

 最後に、芥川賞作家の目から見た“ダメな文章”の例です。どこがダメなのかわかるでしょうか。考えてみてください。

  • うだるような夏の暑さがわたしの頭を混乱させていた。
  • わたしは絶望という名の荒野をただ一人さまよっていた。
  • 子供の頃病弱だったわたしは人見知りが強くつねに孤独だった。

 ヒントは、安易な決め付けや慣用語の使い方、漠然とした概念の使用です。解説は、本書をご覧下さい。

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